マリア病院前脳卒中スケール(Maria Prehospital Stroke Scale;MPSS)は,tPA静注を考慮した一都市全体の脳卒中バイパス搬送システムを確立し、救急隊と脳卒中受け入れ病院が継続的に事後検証作業を繰り返し行って、地域の脳卒中救急医療の質の向上に利用されている病院前スケールです。歴史的に川崎市横浜市が先駆的に2007年から取り入れてきました。世界的に広く救急隊員の脳卒中診断の方法として用いられているシンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)の診断精度を温存しつつ、脳卒中診断スケールというだけでなく,MPSS は重症度を加味した評価をCPSSと同様短時間で行うことができるツールであることから、t-PA 静注療法のためのバイパス搬送フローチャートと連動して使用されています。
 救急要請を受けた救急隊員が現場で脳卒中であると評価(MPSS≧1)することにより、脳卒中患者の圏外搬送の有無、搬送患者の診断治療の適否など、事後検証作業を行うことが可能となることから、継続的な医療の質の向上に利用されています。詳しい内容は共同研究成果をご参照ください。


 CPSSは顔、腕、、言葉の3つを評価しいずれか1つでも異常があるときを脳卒中と判断するスケールですが、MPSSは重症度を加味して評価されるため0から5までの数値をとります。各々のスコア別tPA静注施行率は下記の表のとおりで、スコアが高いほどtPA静注を受ける可能性が高くなります。MPSSの脳卒中予測精度はCPSSと同様で0.737(95%CI,0.688-0.786)、搬送後のtPA静注療法施行を予測する精度は0.689(95%CI,0.645-0.732)となっています。

MPSSスコア搬送後のtPA静注施行率
00%
14.1%
28.8%
313.0%
420.3%
531.5%