MPSS搬送プロトコールは、tPA静注療法のて適正化を目的として運用されてきましたが、tPA静注では再開通が得られない主冠動脈閉塞例に対する血管内治療の有効性が明らかとなり、ガイドラインにも記載されたことから、本論文は、MPSSを用いた血管内治療適応患者のバイパス搬送の可否を検討したものです。

 2012年4月から2015年3月の間に登録されたMPSS搬送事案2031例 (平均年齢, 71.1 ± 13.3 歳)を解析しています。この期間にKSN参加施設は12施設ありこのうち6施設が常時血管内治療が可能な施設(comprehensive stroke centers、CSC)、ほかの6施設は常時tPA静注は可能であるが血管内治療は不可能または常時可能ではないprimary stroke centers (PSCs)と分類されました。またこの間川崎市の搬送手順において、血管内治療を要する患者をPSCからCSCに搬送する"drip and ship" プロトコールは採用されていない状況でした。PSCとCSCに搬送される患者背景にはCSCで血管内治療が多く行われる以外有意差はありませんでした。

 全搬送症例のMPSSスコア別散布図をFigure 1に示す。左カラムがCSC、右カラムがPSCに搬送された症例で、赤の三角が搬送後に血管内治療を受けた症例です。当然24時間体制で血管内治療可能な左カラムのCSCの症例に血管内治療施行例が多くみられ、特にMPSS3以上で施行数が多くなっています。

 Figure 1

 MPSSスコア別、血管内治療施行率を見てもスコアが高いほど血管内治療を行われる率が上昇します(Figure 2)。常時血管内治療を行っているところにMPSS=5の人を運べばその35%に血管内治療が行われますが、PSCに搬送すると5%にしか行われないことを意味します。

   Figure 2

 CSCに搬送されるMPSSスコアと血管内治療施行率の関連は、多変量解析で他の因子を調整しても有意で(Table2)、MPSSによる搬送後の血管内治療施行予測精度は0.689(95%CI, 0.627-0.751)で入院時の医師によるNIHSSスコアによる予測精度0.678(95%CI,0.616-0.740)とほぼ同様でした。